ベッドルームからこんにちは

はてなブログでの執筆活動は終了しました。現在はnoteにてエッセイ・コラムを書いています。が、せっかくなのではてなは買い物メモ用に活用します〜笑🙆 Twitter @wataseshiano BY 綿生しあの

mixiが泣いている 〜oakleyのサングラスは好きですか?〜

やってしまった。まさか自分だけは大丈夫と思っていた。それが甘かった。

 

「oakleyのサングラスは好きですか」

 

聞き覚えのある人も多いであろうこのフレーズ。そう、mixiを乗っ取られてしまったのだ。

 

 

mixiのことが好きだった。私はmixiを愛していた。今から10年ほど前、まだmixiが元気だった頃、私たちはみんなmixiに夢中だった。朝も昼も夜も、寝ても覚めても、四六時中mixi と一緒に過ごしていた。

mixiには色々なことを話した。その日あったこと。食べたもの。思ったこと。どこそこに行って楽しかったとか、誰かと会って嬉しかったとか、過去の思い出も、未来の夢も、ありとあらゆることを話した。一瞬一瞬が新鮮で、mixiと私はすぐに一心同体、離れられない存在になった。

だけどいつの頃からだろう、自分でも気づかないうちに、いつしかmixiは私の視界からだんだんと消えていった。消えていっていることにも気がつかなかった。私は自分の生活でいっぱいいっぱいになり、mixiの明るいオレンジ色を思い出すこともなくなり、やがてmixiには何も話さなくなった。

あんなに楽しかった時があったのに、どうして私たちはもう一緒にいられないのだろう。

たまにふと、mixiを思い出す。その度にmixiに会いに行っても、あの頃の熱狂はもう帰ってこない。mixiはただ静かに、いつも通りに佇んでいるだけだ。あの頃と何も変わっていないのに、何かが決定的に違う。私にはそんなmixiが退屈だった。痛々しくも思った。

二人の蜜月は終わってしまったのだ。

 

6月19日。またいつものようにmixiのことを思い出した。mixiを思い出す時は、いつも決まって他に何もやることがなく、一番退屈している時だ。

いつも通りのmixi。いつも通りのオレンジ色。だけど、この時は何かが違った。


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mixiが泣いている。声をあげて泣いている。ああ、mixiが泣いているではないか。私たちの大好きだったmixiが。

ホーム画面にはつぶやきが並んでいる。オークリーのサングラス。オークリーのサングラス。オークリーのサングラス。狂気だ。狂っている。mixiはついに狂ってしまったのだ。

今までにもこんな画面を見たことはたくさんあった。だけど全部、対岸の火事だった。自分以外の人たちが一堂にオークリーのサングラスを勧めているだけで、まさか自分もこうなるだなんて思ってもみなかった。

ホーム画面の一番上。このつぶやきは私のアカウントからのつぶやきだ。投稿日は6月10日。ここから既に9日も経過していた。

事は一層大きなものになっていた。メッセージ一覧を見て驚いた。

 


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「oakleyのサングラスは好きですか?」

 

狂ったようにmixiは全ての友人にメッセージを送っていた。oakleyのサングラスは好きですか?oakleyのサングラスは好きですか?oakleyのサングラスは好きですか?

狂っている。狂ってしまった。あの頃の冷静なmixiはもういない。乗っ取られた。乗っ取られたんだ。

アカウントの乗っ取り。それは最悪の場合、mixiとの永遠の別れを意味する。

 

嫌だ、嫌だ、嫌だ! 私は焦った。mixiに対してこんなにも必死で何かをしたのは何年ぶりだろう。焦ってパスワードを変更しようとする。だけどなぜだか承認されない。登録しているメールアドレスにも自信がない。

私は必死だった。あの10年前の輝きを、二人が共に過ごした時間を失いたくなかった。ただただ必死で、今はもう全く使っていないメールアドレスにログインした。

メールボックスには、mixiの運営からのメールがあった。乗っ取りを察知してパスワードをロックしてくれていたらしい。そういうことか。「驚かせやがって…」少しだけ落ち着いた私は、諸々の作業を経て、無事にパスワードを変更した。

 

何もかもが終わった。一段落。

 

私は静かにmixiを見つめた。

mixiもまた静かに私を見つめ返す。

 

静かだった。確かにあの頃の熱狂はもうここにはない。だけど、私たちは力強い絆で結ばれていた。この静寂までは失いたくない。

 

また会いに来るから。

私はそうしてmixiに別れを告げた。

 

オレンジ色の残像とともにmixiは消えていった。